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憑かれた男の逆バージョン。でもやっぱり船長押せ押せの。

赤髪の副船長が彼の船長に惚れているというのは、赤髪海賊団のクルーであればみんな知っていることだ。
 本人は隠しているつもりなのだが、同じ船で生活していればなんとなくわかってしまうというもの。
 だがしかし、想われ人である船長の方はといえば、副船長に限らず誰であろうとスキンシップ過多なので、果たして副船長の想いが通じているのかいないのか、よくわからない。
 はっきりしているのは、今のところ副船長がソッチ方面の要求を船長にしたことことは一度もない、と言うことだ。
「だからな、副長は真面目すぎるんだっての」
「……」
「お頭はアレだ、人から好かれるのに慣れてっからな、ソッチ方面結構鈍いぞ」
 戦勝祝いの宴の最中、いつのまにか酔いつぶれた船長に気付いた副船長が、船長室に連れて行こうと立ち上がろうとしたところを幹部たちが引きとめた。いつの間にかベックマンの周りに集まっていた幹部たちは面白がって副船長の恋の行方について話し始める。
「だいたいよ、お頭はアッチは大丈夫なのか?」
 赤髪の船では多くはないが、船乗りにはそれは珍しいことではない。十代の頃から見習いとして船に乗っていたがシャンクスがそちらの経験があったとしても不思議ではないし、本人に経験がなくとも見聞きしたことはあるはずだ。
「でも陸で買うときは女だろう?」
「だな」
 赤髪のシャンクスは真っ当な海賊らしく、陸に上がれば決まって仲間と酒場で騒ぎ、悪所で遊ぶ。
「あ~、別にアッチがダメってわけじゃぁねえみたいだけどなぁ」
「何でもアリな気がするな、あの人は」
「モラルとか関係ねぇもんな」
 そのへんの経験値については日々の会話から想像できるというものだ。シャンクスはそれらの話を聞かれたらあっさり暴露してしまう。流石に受身の立場になったという話を聞いた人間はいないが。
「羞恥心ってもんが欠けてんだな、あの人は」
「聞けばあっさりベッドの中の手順まで逐一説明してくれるぜ、きっと」
「カーッ!聞いてる方が恥ずかしいっての」
 ヤソップの台詞に男たちはゲラゲラと笑った。
「いっそベックがお頭にやらせてやりゃあいいじゃねえか」
「ベック相手にか?幾らお頭でもそりゃあ……」
「わっかんねえぞぉ、お頭は」
 無言で煙草を吸っているベックマンの顔を男たちが伺う。
「……」
「うへ、ダメだな。俺の想像の限界を超える」
 生粋の女好きであるヤソップは嫌な想像を追い払おうとフルフルと頭を振った
「しっかしお頭は何考えてんだろうねえ」
 シャンクスの嗜好はともあれ、彼が一人の人間としてベン・ベックマンを信頼していることは判りきっている。もっとも、この海賊団の仲間でシャンクスが信頼していないものなどいないが、中でも筆頭は副船長だというのが大方の見解だ。
「意外によぅ」
「あ?」
 ボソリと額に刺青を入れた航海長が言う。
「お頭はアレで意外に意地張ってるだけかも知れねえぞ?」
「ああ?」
「だからさ、酒場で女を口説くのも、猥談に加わるのも、中々態度をはっきりさせねえ副長に対するアピールなんじゃねえかって話さ」
「ブッ、お頭がかぁ?」
「なるほど、自分から誘いをかけるのは負けた感じがしてイヤだってか」
 ヤソップがニヤニヤ笑いながら話に乗っかる。
「意地っ張りだからなぁ、お頭は。ことベックに関しては特に」
「こりゃあベック、やっぱりお前サンがもっと強引に行かなきゃダメだな」
「……」
 そうだそうだ、と男たちが囃し立てる。
「馬鹿馬鹿しい」
 ベックマンはスクッと立ち上がった。
「馬鹿馬鹿しいってこたぁねえだろうが。相手は赤髪のシャンクスだ。本気でやらなきゃ返り討ちに遭うぞ!」
「本気も何も、俺はどうするつもりもない」
「イヤよイヤよも好きのうちっていうだろう。まあお頭の場合喜んで跨ってくるかも知れねえが」
「だから、俺は……」
「いざとなりゃ、ベック。てめぇが足を開いとけ!」
「……」
「がんばれよ!」
 口々に応援の言葉を言う男たちを、正しくヨッパライ、と言う。もはや何を言っても無駄だと悟った副船長はその応援を無視して船長を抱えて船室へと向かって行った。
「……」
「……」
「……」
 甲板から完全に二人の姿が消えるのを待って、男たちは盛大に笑い声を上げた。


「んぁ?!」
 船長をベッドに乱暴に投げ出して、ベックは煙とともにため息を吐いた。
「イテエな、もっとヤサシクできねえのか」
 酒が回って赤くなった目で睨まれて、ベックマンはヒョイと肩を竦めた。
「狸寝入りなんかするからだ」
「ナンだ、知ってたのか」
「さっさと起きろ」
「あの話をされてる最中にか?」
「……」
「流石に起き難いぞ、幾ら羞恥心の欠けた俺でも」
 ベッドに寝転がったまま、シャンクスはニヤリと笑った。
「オマエ、どっちがいい?」
「何の話だ?」
「上と下だよ」
「……アンタ、まだ酔ってるな」
 ああ、酔ってる、と言い放ち、シャンクスはベックに向かって手を伸ばした。
「オマエが選ばないなら俺が決めるぞ?」
「……もう、寝ろ」
 部屋を出ようと背を向けた副船長のサッシュを素早く掴み、力いっぱい引き寄せた。
「っ……」
 船長の上に背中から倒れこんだ副船長が慌てて身を起そうとするのを許さず、シャンクスはベックマンの首筋に噛み付くように口付けた。
 ベックマンの身体が硬直するのがわかり、シャンクスはクスクスと笑いながら素早くシャツの中に手を入れる。
「……アンタ、一体何を……」
 やっとのことで開いた口でそう呟くと、上半身を捻って背後の男を見やった。背後からベックマンを抱き締めたシャンクスの瞳には楽しげな色がはっきりと浮かんでいた。
 シャンクスは元々他人に対するスキンシップが多い人間ではあるが、こんな暴挙に及んだことは一度もなかった。ましてや、シャンクスは先ほどの甲板での幹部たちの話を聞いていたのだ。馬鹿にしているとしか思えない。
 途端に酷く腹立たしくなり、強引に腕を払ってシャンクスから離れた。
「ベック?」
 寝転んだままキョトンとした顔で見上げてくるシャンクスをベックマンは睨みつけた。
 おそらく、甲板での仲間たちの話を聞いて悪ノリしているに違いない。無神経なわけではないのだが、ことベックマンをからかうことに熱心なあまり、時に酷な仕打ちをすることがある。
「お頭、悪いが俺は聖人君子じゃないんだ」
「知ってるさ、オマエは海賊だ」
 ソレガドウシタ、とシャンクスは肘だけで上半身を支えたまま顎を上げ、目を細めた。
「犯されたくなければバカな真似はしない方が良い」
「ほほう?言うねぇ」
「アンタは俺を随分とナメているようだが、アンタが思っているよりも俺は」
「ナメる?まさか!」
「……」
「オマエは、赤髪の副船長だぞ」
 シャンクスはニヤリと笑い、足先でベックマンの腿をするりと撫でた。
「……お頭」
「オマエは海賊なんだろう?だったら奪えよ」
「……」
 器用に動く足が先ほど乱されたシャツの中に入り込む。
「欲しいものは奪え。それが、海賊だ」
 じっと自分を見上げる瞳に、思いがけず真摯なものを見つけてしまったのが、運の尽きだったと後々何度もベックマンは思い返すことになる。が、その時のベックマンはまだ若く、あまりにもシャンクスと言う男に囚われていた。
「……」
「……」
 しばしの沈黙の後、ベックマンは悪戯を続けるシャンクスの足首をグッと掴んだ。
「……遠慮はしないぞ」
 足を捕らえた大きな手に、シャンクスは満足気に唇を持ち上げた。
 
 その後ベッドの上でシャンクスは「遠慮はしない」と言った男が、海賊として稀に見る真面目さと実行力を持つ男であることを身をもって知ることになる。


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