忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

若シャン若副。赤髪初書きで。船長押せ押せの。

赤髪の船長が彼の副船長に惚れているというのは、赤髪海賊団のクルーであればみんな知っていることだ。
 本人が隠す気がまるでないのだから、同じ船で生活していればイヤでも知れるというもの。
 だがしかし、想われ人である副船長の方はといえば、相も変らぬ無表情で、果たして船長閣下の想いが通じているのかいないのか、さっぱりわからない。船を降りる気はないのだから、我慢できないほど嫌がっているということはないらしいが。
 はっきりしているのは、今のところ船長のソッチ方面の要求に副船長が応えたことは一度もない、と言うことだ。
「だからな、お頭ももっと強引にだなぁ」
「だってよぉ……」
「副長はアレだ、海賊の癖に妙に生真面目だからな。自船の船長には中々手ぇせねえって」
 戦勝祝いの宴の最中、いつのまにか姿を消した副船長に気付いたシャンクスが、探しに行こうと立ち上がろうとしたところを幹部たちが引きとめた。いつの間にかシャンクスの周りに集まっていた幹部たちは面白がってシャンクスの恋の行方について話し始める。
「だいたいよ、ベックの野郎はアッチは大丈夫なのか?」
 赤髪の船では多くはないが、船乗りにはそれは珍しいことではない。十代の初めから見習いとして船に乗っていたベックマンがそちらの経験があったとしても不思議ではないし、本人に経験がなくとも見聞きしたことはあるはずだ。
「でも陸で買うときは女だろう?」
「だな」
 副船長が真面目とは言ってもそれは海賊の中でのこと。陸に上がれば仲間と酒場で騒ぎもすれば、悪所遊びだってする。
「あ~、別にアッチがダメってわけじゃぁねえみたいだけどなぁ」
「興味がねえってか」
「必要ねえもんな、あいつにゃぁ」
 どうしたわけかベックマンと言う男は妙に女にモテる。愛想もなければ顔も強面なのだが、口説いている様子もないのにいつの間にか酒場から女と姿を消している。
「いやだねぇ、気取りやがってよう」
「ベッドに入りゃぁやってることは同じだろうに」
「同じじゃねえんだろ、オネエチャン方にしてみれば」
 ルゥの台詞に男たちはゲラゲラと笑った。
「いっそお頭が手ぇ出しちまえばいいじゃねえか」
「ベック相手にか?幾らお頭でもそりゃあ……」
「ダメかい?」
 聞かれてシャンクスはほんの少しだけ首を傾げて考えた後、いや、と答えた。
「別にそれでもいいんだけどよ。一応、アイツの意志ってモンを尊重してやらねえと」
「おお!お頭の口からそんな言葉が出るとは……」
「ヤソップ、テメエ……」
 失敬だな、とシャンクスが頬を膨らませる。
「しっかしアイツは何考えてんだろうねえ」
 嫌がっているわけではない、らしい。
 ベックの嗜好はともあれ、彼が一人の人間として「赤髪のシャンクス」に惚れ抜いていることは判りきっている。もっとも、この海賊団の仲間でシャンクスに心酔していないものなどいないが、中でも筆頭は副船長だというのが大方の見解だ。
「意外によぅ」
「あ?」
 ボソリとひげ面の甲板長が言う。
「副長はアレで意外に奥手なのかも知れねえぞ?」
「ああ?」
「だからさ、酒場で女を口説かねぇのも、猥談に加わらねぇのも、やらねえんじゃなくて、出来ねえンじゃねえかって話さ」
「ブッ、副長がかぁ?」
「なるほど、アイツは口説かれ慣れてても口説き慣れてねえってわけだ」
 ヤソップがニヤニヤ笑いながら話に乗っかる。
「商売女相手なら、まあアッチから声をかけてくるからな。アイツの場合女の誘いにのっかりゃいいわけだし」
「こりゃあお頭、やっぱりお頭がもっと強引に行かなきゃダメだな」
「強引か」
 そうだそうだ、と男たちが囃し立てる。
「よし!判った!」
 シャンクスはスクッと立ち上がった。
「いいか、お頭。相手は奥手の副長だ。恥ずかしがって多少抗っても引くな!」
「ああ!」
「イヤよイヤよも好きのうちっていうだろう。アイツがたとえ嫌がったとしてもだ、それはアイツの本意じゃねえ」
「おう!」
「いざとなりゃ、お頭。アンタが押し倒したってかまわねえ!ガッツリ行け!」
「マカセロ!」
「がんばれよ!」
 口々に応援の言葉を言う男たちを、正しくヨッパライ、と言うのであろうが、本人もかなりのアルコール摂取状態である船長閣下はその応援を真に受けて意気揚々と船室へと向かって行った。
「……」
「……」
「……」
 甲板から完全にシャンクスの姿が消えるのを待って、男たちは盛大に笑い声を上げた。


「ベック!」
 いつものようjにノックもなく派手な音を立てて副船長室の扉を開けた相手をチラリと見て、ベックは煙とともにため息を吐いた。
「お頭……ドアが壊れる」
 無駄だと知りつつ一応そう声をかけるが、案の定シャンクスはさらりと無視をしてズカズカと部屋に入ってきた。
「どうした」
「ベック、心配しなくていいぞ」
「?」
「俺が全部してやるから」
「……何を?」
 海図に向き合っていたベックの肩を掴んだシャンクスは、無理矢理自分の方にベックを向かせた。
「オマエ、どっちがいい?」
「だから、何の話だ?」
「上と下だよ」
「……??アンタ、酔ってるのか?」
 酔ってねえ、と言い放ち、シャンクスはベックの腕を掴んで引っ張り立たせた。
「オマエが選ばないなら俺が決めるぞ?」
「お頭、頼むからもう少し判りやすく話してくれないか?何をしてくれるって?」
 噛み合わない会話に苛立った副船長が眉を寄せると、シャンクスはニッと笑ってベックマンの首に手を回した。
「おい……」
 ギョッとした副船長が身を引こうとするのを許さず、シャンクスはベックマンの口に噛み付くように口付けた。
 慌ててシャンクスを引き剥がそうとしたベックマンの足に素早く足を絡ませ、体重をかける。思わずよろけたベックマンはそのまま背後のベッドへ倒れこんだ。
「っ……アンタ、一体何を……」
 やっと解放された口でそう呟くと、腹に跨る男の顔を見上げた。そしてその瞳に熱っぽい欲の色を見つけて目を見開いた。
 一体、どうしたというのだ。
 今までにもシャンクスはベックマンに対して様々な口説き文句を口にしてきたが、こんな暴挙に及んだことは一度もなかった。だからこそベックマンも放置してきたのだが……
「ベック……」
 艶めいた声で名前を呼ばれてベックマンは内心舌打ちした。
 おそらく、甲板に居る男たちがシャンクスをけし掛けたに違いない。頑固で意志の強い男ではあるが、ある面酷く素直で単純なところがあるシャンクスは、ヨッパライどもに煽られてすっかりその気になってしまったようだ。
「お頭、ちょっと落ち着いてくれ。ああ、その、俺は……」
「黙ってろ、ベック」
 黙ってたら取り返しがつかないことになるだろうが、と副船長は圧し掛かってくるシャンクスを押し返す。
「あのな、お頭……」
「オマエさ、男とヤッタことねえだろ?」
「当たり前だ」
「じゃあやっぱり、俺がしたほうがいいよな」
「…………………………は?」
「大丈夫、ちゃんとよくしてやるからさ」
 ベックマンは我が耳で聞いた台詞を反芻し、一気に顔を青くした。
「な、に?」
「俺はどっちでもいいんだけどさ、ヤリ方わかんねえんじゃしょうがねえだろ?俺が」
「待て!……待ってくれ」
 服の中に入り込んでくる手をどうにか止めて、ベックマンはシャンクスを見上げた。
「なんだ?」
 じっと自分を見下ろす瞳に、思いがけず真摯なものを見つけてしまったのが、運の尽きだったと後々何度もベックマンは思い返すことになる。が、その時のベックマンはまだ若く、あまりにもシャンクスと言う男に囚われていた。
「……」
「……」
 しばしの沈黙の後、ベックマンは口を開いた。
「……俺がする」
 背中に回された大きな手に、シャンクスは満足気に唇を持ち上げた。
 
 その後ベッドの上でシャンクスは『奥手のベン・ベックマン』などと言う生き物は何処にも存在しないことを身をもって知ることになる。
PR
この記事にコメントする
名前
題名
メールアドレス(非公開)
URL
コメント
文字色   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード
AD 忍者ブログ [PR]
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
リンク
フリーエリア
最新CM
[12/20 tordpooto]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
最古記事