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ヒム誕2011!!
ウチのアリスは火村を甘やかしすぎですな……

ところで、私はネタを思いついた時にメモ代わりにSSっぽいものを書きます。それを膨らませながら「コレはアリスだなー」とか「マルエーだなー」とか「副シャンだなー」とか判断して話を書くことが多いのですが……このネタ前に何かで使ったような気がする……orz
もしどこかで読んだぜ、って記憶がある方がいらしたら教えてください……(ダメ人間)
そんなこんなで、火村先生誕生日おめでとさん!!!
 


「ん?」
 講義を終えて研究室に戻ろうとしたところで、廊下に見覚えのある姿を見つけた。
「アリス?」
 火村の声に反応したアリスは、バッと振り返ると早足で火村に近づいてきた。その顔つきに火村はちょっと身を引いた。
「お、おい……」
 アリスは火村の腕を掴み、そのまま研究室に連れ込んだ。
「なんだよ、一体」
 部屋に鍵をかけ、ソファに火村を座らせるとアリスは腕を組んで其の前に立ちふさがった。
「君、俺に言うことないか?」
「言うこと?」
 じっと見下ろすアリスの視線を真正面から受け止め、火村は唇を引き上げた。
「さあ、覚えはないが?」
「……」
 アリスの眉がピクリと動いた。
「うわっ、おい……」
 ソファに座った火村の膝に乗り上げて、スーツを脱がせにかかる。
「アリス、ここ、大学……」
「黙れ」
 ネクタイに手を掛けて乱暴に外す。火村は僅かに抵抗したが、いつもコロコロと表情を変えるアリスが無表情を貫いているのを見て、大人しくなった。
 ネクタイを床に放り投げたアリスは、火村のシャツを開く。
「コレは、なんや?」
 肩から胸にかけて巻かれた包帯は、まだ消毒液の匂いがする。
「ちょっとな。大した傷じゃない。場所が悪くて包帯を巻こうとすると大げさになっちまうんだよ」
「大した、傷、じゃない?」
 低い声は震えていた。
「ああ、かすり傷だ」
 即答した火村に僅かに動きを止めたアリスは、火村の顔を見下ろし、それから包帯を解きに掛かった。
「おい、止せよ」
「いーち、にー、さーん……」
 まだ痛々しく肉が盛り上がっている傷口の、針のあとを数え始めたアリスに、「ああ怒っているのだな」と火村はぼんやりと思った。
「五針」
「……」
「コレがかすり傷か」
「……」
 答えない火村を睨みつけ、アリスはむき出しにされた傷に口を寄せる。
「ッ……アリスッ!」
「痛いか?」
「……ああ、痛いよ」
 何をやっているんだ、と思う。
 職場で、服を脱がされて、傷口を舐め上げられて。
「消毒液の味がする」
「バカ」
「バカはお前や」
 そのままズルズルと身体を床に落とし、アリスは火村の胴に腕を巻きつけて腹に顔を埋めた。嗅ぎなれたキャメルの匂いと……消毒の、匂い。
「アリス」
「……」
「アリス」
「なんや?」
「……黙ってたのは悪かったよ。でも本当に大した傷じゃないから、お前が心配するようなことじゃない」
「……」
 ああ、と思う。火村はいつだって、一人で戦っているのだ。十数年、共に並んで来たつもりでも、結局、一人。
「火村」
「ん?」
「帰る」
「え?」
 立ち上がったアリスはそのまま火村の顔も見ずに研究室から出て行ってしまった。
「アリスッ!」
 追いかけようとして自分が酷い姿であったことを思い出す。慌ててシャツを着て廊下に出たが、アリスの姿はもうとっくになくなっていた。
 
 
 
 アリスと連絡が取れない。
 携帯にも出ないし、メールにも返信が無い。連絡が取れなくなってもう一週間。いつもならばそれくらい連絡が取らないことはざらだが、前に会った時の別れ方が別れ方だっただけに、気にかかる。それに連絡を取らないのと取れないのでは大分意味合いが違う。
 十年以上の付き合いの中で、喧嘩をしたのは一度や二度ではない。些細な言い合いだったこともあれば、もうコレで友情は終わりかも知れないと思うほど深刻なものだったこともある。それでも互いに反省し、許しあって今まで付き合ってきた。
 しかし、今回のコレはどういうことか。
 喧嘩にすらならない。自分がアリスを怒らせたことはわかるが、どうして怪我を黙っていただけでアリスがあそこまで怒るのか、火村にはどうしても理解できないのだ。
 命に関わるような怪我ではなかった。酔っ払いの喧嘩を止めようとしてちょっとしくじっただけのことだ。この程度の怪我をわざわざ報告するのもなんだか妙じゃないか?まるで心配してもらいたいみたいじゃないか。
 電話では埒が明かないと火村は直接アリスのマンションを訪れた。
エントランスを通り抜けようとして、火村は何気なく郵便受けを見る。
「……?」
 アリスの部屋のポストに、新聞や手紙が溜まっている。入りきらない新聞はビニール袋に入れられてポストの上に乗せられている。
 郵便受けは鍵が無くても暗証番号で開けられる。締め切り前のアリスの為に何度も郵便物を取り出している火村は迷わず其の番号を押した。
 0415
 それが何を意味する番号なのか知っているだけに、火村はアリスの為に郵便物を取り出す作業が実は好きだったりするのだが……
 バサバサと落ちてきた新聞と郵便物。新聞の日付は、4月4日。京都に来た翌日だった。
「戻ってないのか……?」
チャイムを鳴らしても返事は無い。鍵を開けて中に入るが人気はまるで無かった。駐車場に車があったということは電車で出かけたのか?
しんとした部屋。
 部屋は片付いていて冷蔵庫の中には殆ど物が入っていなかった。とはいえ締め切り明けのアリスの部屋の冷蔵庫は大体いつもこんな感じだからあまり参考にならない。
 アリスは取材旅行や出版社との打ち合わせ、イベントごとなど何かと留守にすることも多いが、三日以上留守にするときは新聞を止めていたはずだ。とはいえ止め忘れた可能性も否定できない。
 実家にも帰っておらず、アリスの母親は行き先を知らなかった。
「何処に行っちまったんだ」
 アリスは火村のフィールドワークに一緒に行くことがある。犯人側の人間から逆恨みされることだってあるかも知れない。
アリスが自分の意思で姿をくらましているのであればまだいい。多少ぼんやりしているところはあるが旅にだって慣れている。だが、もしアリスの意思に反してこの部屋に戻って来られないの状況にあるなら……
 翌朝大学の講義に間に合うぎりぎりまでアリスの部屋で過ごしたが、結局アリスは帰ってこなかった。
 部屋を出ようとして足を止めた。
リビングに引き返し、メモを書く。
『会いたい。戻ったら何時でも構わないから連絡をくれ』
 家主の居ない部屋のドアに鍵を閉め、火村は京都へと帰った。

 更に三日が経った。
相変わらずアリスからの連絡は無い。
 
 火村は大学の講義を終えると下宿に戻り、ばあちゃんにアリスから連絡が無かったか聞き、大阪に向かう。そこで一晩過ごして朝また京都に帰る。そうして過ごした三日間で火村が知ったことは、アリスは徹底して火村への連絡を絶っているということだけだった。
 明日は大学は休みだ。その間火村はアリスのマンションで過ごすつもりだ。
 大阪へと向かう車の中で、火村は溜息を吐いた。
 今日もアリスが戻らないようならば、もう一度アリスの実家に連絡をしてみよう。
 状況によっては、警察にも。
 いい年をした大人が姿をくらましたからと言って警察は動いてはくれないだろうが、フィールドワークによって出来たコネが多少なりとも使えればいいと思う。尤も、捜査一課の世話になるようなことにアリスがなっているとは考えたくも無いが。
 地下駐車場に車を停めたとき、火村の携帯が鳴った。
 慌てて鞄から取り出し、取り落としそうになりながらディスプレイを確認する。
「!」
 深呼吸して通話ボタンを押した。
「アリスッ……!」
 思わず声が掠れた。
『……火村?』
「お前、大丈夫なのか?」
『え?』
「怪我はないか?無事なんだな?」
『う、うん……?元気やで』
「そうか…」
 ホッと息を吐く。
『火村?』
「今何処にいるんだ?」
『夕陽丘や。帰ってきたら君のメッセージがあったから……』
「直ぐ行く。待ってろ」
『え?直ぐって……』
 話しながら火村は車を降りた。一刻でも早く行かなければアリスが居なくなってしまうような気がして。
「直ぐは直ぐだ。いいな、待ってろ」
『う、うん』
 エレベータが上るのをイライラと待ち、ドアが開くのももどかしくてこじ開けるようにして廊下に出る。アリスの部屋のチャイムを押してガチャガチャとドアノブを回した。
「えっ?ひ、火村?」
 扉の向こうで困惑している声が聞こえる。まさかこれほど早く来るとは思っていなかったのだろう。
「アリス、ドア開けろ」
「ちょっと待ってや」
 チェーンと鍵を開ける音が聞こえてドアが僅かに開いた。
「アリスッ」
「わあっ」
 開きかけたドアを強引に引っ張ると靴を突っかけただけのアリスが倒れこんできた。
「アリス!」
「ちょ、ちょっと、火村!待て、お前、ここ外やから!」
 ギュウギュウと抱き締めてくる火村を慌てて部屋に引っ張りこんだ。
鍵を掛けなおし、腰に手を当てて振り返ったアリスは、赤らめた顔で抗議する。
「君なぁ!あんなトコで誰かに見られたらどないすんねん!」
「構うもんかよ」
「かま……構うわ!アホッ!」
 火村は黙ってアリスの腕を引いた。
「……何処行ってたんだよ」
「何処って、富山やけど。あ、土産買うて来たで」
 アリスはなんでもないことのように答えた。
「何度も電話したんだ。メールも」
「ああ、うん……ごめんな」
 アリスが謝ったことで、故意に火村からの連絡を無視していたことが判ったが、火村は責める気にはならなかった。
「……心配した、凄く」
「ごめん……」
 火村の白髪交じりの髪をそっと撫でると、火村はフウッと息と吐いた。
「無事でよかった」
 ゆっくりと顔を上げた火村はアリスの頬に掌を当てた。
「アリス」
「ん?」
「………………俺が悪かった」
 搾り出すようにそう言った火村に、アリスがクスッと笑った。
「……うん」
 確かめるようなキスをして、それから火村はアリスの首筋に顔を埋めた。
 
 
 
「アリス?」
「……ん?」
 コトが終わってウトウトしていたアリスは、囁くように名前を呼ばれて目を開けた。
「起したか?」
「まだ寝てへんよ」
 遠慮がちな問いかけに笑って答えると、火村のほうに身体を向け、腕を背中に回した。火村は黙ってアリスの髪を弄っている。
「お前が戻ってこなかったらどうしようかと思ったんだ」
「大袈裟やなぁ」
「……そうだな。でも本当にそう思ったんだぜ?その、お前の実家にも電話しちまった」
「あは、聞いた聞いた。おかんからメール来たわ」
 火村がムッとしたのを見てアリスが苦笑する。
「ごめんて。でもいっぺんだけやったから、正直こんなに心配してるって思わんかったんや」
 警察沙汰になるようなことになる前には連絡をするつもりだったし。
「ギリだな。今日帰ってこなかったら警察に相談しようとしてた」
「げ、本気か?」
「本気だ」
 ほんまにギリギリやなーとアリスは笑った。
「笑い事じゃねえよ……」
「少し反省させようと思って」
「充分しました」
「みたいやな」
 火村の肩の傷痕にキスをする。まだ僅かに肉が盛り上がっているが、熱は引いていた。
「お互いにお互いの生活があるんや。全部報告せいとは言わんよ」
「ああ」
「でもな、俺が君を……君のコトを君が思うてるよりもずっとずっと考えてるって忘れんといてくれ」
「……ああ」
 知らされないことの不安と孤独を、イヤと言うほど理解した。
「君が想像しとるより、俺は君のコト、大事やねんで」
「ああ……ありがとう」
 火村の素直な言葉に、アリスは目を瞬かせた後ふわりと笑った。
「あ」
「ん?」
「時計、12時回ったな」
 アリスの視線の先にある時計の針は、12時を少し過ぎていた。
 火村はアリスが何故昨日帰ってきたのかを理解してひゅっと息を飲んだ。
「誕生日おめでとう、火村」
「……ありがとう」
 ギュウと抱き締めた身体は、相変わらずひょろりとしていた。
「ありがとう、アリス」
 僅かに掠れた声でそう言った火村の額に、アリスは小さく笑ってそっと口づけを落とした。
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