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おまけ本として配ろうとしていた没SS。シャンクスバースデー にマルエー参戦。
思っていたよりシャンAにも副シャンにもならず……悔!

「……で、なんで俺はほったらかしなんだよ」
「すまない」
 低くそう答えた男の顔を見て、エースは溜息を吐いた。
「すまねぇなんて思ってねえくせに」
「………………そりゃ、すまん」
 今度は肩を竦めてそう答えた男に、エースがクスッと笑った。
「アンタ、ホントになんであんなのに捕まっちゃったわけ?」
「……それがわからねぇから逃げられん」
「……結構バカだな、アンタ」
「ああ」
 ふわりと漂う煙草の煙は嗅ぎ慣れたそれと香りが違う。エースは少し離れた場所で行われている勝負に視線を戻した。
「アノヒトたちも、大概バカだよな」
「……そうだな」
 レッドフォース号の甲板には、赤髪海賊団の面々が勢揃いしていた。その広い甲板のど真ん中、丁度メインマストの下の辺りでは、本日めでたく誕生日を迎えた船長閣下とその船長がぜひにと所望した男が熾烈な勝負を繰り広げていた。
「ねえ、どっちが勝つと思う?」
「さて……エースはどっちだと思う?」
「うーん……マルコ、かな?」
「俺もだ」
 そうなの?と視線を向ければベックマンは静かに笑った。
「お頭は、ここ三日飲み続けてるからな。お前のところの隊長相手は、いささか厳しいだろう」
 マルコは入団当時からあのオヤジの相伴をしているのだ。並みの酒豪ではない。
「じゃあなんでわざわざ勝負挑んだわけ?」
「なんでだと思う?」
 僅かに笑いを含んだベックマンの声にエースが首を傾げた。
「アンタは知ってんの?」
「直接言われたわけじゃないが、想像はできる」
「当たってんの、その想像」
「おそらく」
「ふうん?」
 わあっと歓声が上がる。どうやら二人で樽を空にしたらしい。新しい樽を持ってこいと若手に命じるシャンクスの声が響く。
「大丈夫なの、アレ」
 遠目で見てもシャンクスの顔は髪と遜色ないくらいに真っ赤になっている。対するマルコの顔もかなり赤い。
「ドクターが止めるまでは大丈夫じゃないか?」
「でもさぁ、ドクターって、あの人でしょ?」
 エースが指差した先には酔い潰れて甲板に放置されている男がいる。
「……おや」
「止めたほうがいいんじゃねえ?マルコを担いで帰るとか嫌なんだけど、俺」
 ナースの姉さんたちに叱られちまう。
 エースがぴょんと立ち上がる。エースもかなり飲んでいるはずだが、足元はしっかりしている。白ひげの船に乗ってもう二年、随分と鍛えられたようだ。
 メインマストに向かって歩いて行くエースを見て、ベックマンが小さく笑った。
 おそらくエースが出て行けばますます二人は勝負を止められなくなるだろう。
「景品に自覚が無いんだから仕方ねえな」
 


「通信?俺に?」
「ああ」
 エースは食べかけのピラフを飲みこみ、差し出された携帯型電伝虫を受け取った。
『久しぶりだな、エース』
「あれ?ベック?」
 思わぬ相手に声を上げたエースに、近くにいたジョズとサッチが寄ってくる。
「どうしたんだ?」
『ちょっと頼みがあるんだが』
「頼み?」
『ああ……二日ほど、こっちに来れないか?』
「ん?」
 ジョズとサッチが顔を見合わせる。
「オヤジに訊いてみるけど……どうしたんだ?」
『お頭が、どうしてもお前を呼べと言っていてな』
「オッサンが?なんで?」
 至極当然の疑問に、なぜかベックマンは僅かに口ごもった。
「理由が言えねえなら許可を出すわけにはいかねえよい」
 いつの間に側に来たのか、横から通信機を奪い取ったマルコがそう言うと、電伝虫の顔が僅かにおかしそうに歪んだ。
『一番隊のマルコか?久しぶりだな』
「ウチの隊長格をそう気軽に呼び出されちゃぁ困るよい」
『……すまん、口にするのが少々情けない理由なものでな』
「なんだよい」
『明後日がウチのお頭の誕生日なんだ』
「は?」
「へええ……誕生日かぁ。更にオッサンになるわけだな」
『で、お前に会いたいんだそうだ』
「なんだよ、そりゃ」
『エース、お前最近こっちに顔を出さないだろう?拗ねてるんだ』
 会わせろと騒いでいて手に負えねえ、そう苦笑交じりに言われてエースがブハッと吹き出した。
「あははははは!いいよ、わかった。オヤジに頼んでみるよ」
「エース!」
『無理を言ってすまない』
 幾分ホッとした声にまたエースが笑った。どうやら大分困らされたようだ。
「いいよ、俺も久しぶりにシャンクスに会いたいし。みんなにもしばらく会ってねえしさ」
 その一言にマルコの額にぐっと青筋が浮かんだのを見て、今度はサッチが吹き出した。
「なぁ、たまにはイイよな?マルコ」
 ニコッと笑顔で言われてマルコがぐっと詰まる。
「……敵船だぞ。もしもの事があったらどうするんだよい」
『エースの安全は保障するが、心配ならアンタも来るか』
「は?」
『お頭はアンタにも会いたがっていてな。不死鳥マルコ』
「お断りだよい」
 誰があんな変態男の居る場所に行くか、そう吐き捨てるように言うと、サッチが
「でもよぉ、そのヘンタイのトコにエース一人で行かせるってのも……」
と呟いた。
「……」
「誰かさんのせいで会うの久しぶりなんだろ?なーんかおかしなコトされちゃうんじゃねえの?」
「………………チッ」
 そもそもちょくちょく赤髪の船を訪れていたエースが最近行かなくなった原因は、マルコにある。
 白ひげに出会う前からシャンクスといわゆるカラダのお付き合いをしていたエースは、白ひげの船に乗ってからもその関係を続けている。もちろんそのことはオヤジに伝えてあり、歓迎できることではないがまあ仕方ない、とオヤジも黙認していた。
マルコもエースとシャンクスの関係を知ってからしばらくは静観していたのだが、半年ほど前からなんやかんやと理由を付けてエースが赤髪の船を訪れることを妨害しているのだ。
『来るか、マルコ』
「……」
「行こうぜ、マルコ。シャンクスの船って面白いよ。ジャングルみてえな庭があったりさ」
「……」
『来てくれ。お頭も喜ぶ』
「……赤髪のために行くわけじゃねえよい」
「やった!俺、オヤジに言って来る!んじゃ、ベック!また後で」
 ベックマンへの挨拶もそこそこにエースは食堂から飛び出して行った。



ちょっと、二人とも。そろそろ止めた方が……」
「エーーーースッ!よくきた!ここ、ここにすわれっ!いいからすわれっつうの!」
 呂律の回らない口調でシャンクスが手招きする。
「ヤダ。アンタ酒臭い」
「んだと、コラ!」
 プイッとそっぽを向いたエースにシャンクスが凄むが、べろべろに酔った状態では全然効果はない。
「大体なんで二人で飲み比べなんかしてんだよ」
「うるせえっ!大事なお宝が掛かってんだ!」
「負けたらオヤジに顔向けできねえんだよいっ!」
「お宝ぁ?」
 まあお互い海賊だからお宝を掛けて勝負すると言うのも分からなくはないが、普段あまりお宝に固執しない二人がここまでムキになるお宝とは何だ?
「お宝って、何掛けてんの?」
「「…………大事なモンだよ(い)」」
 そう言って二人はまた睨みあい、新たに酒の注がれたコップを持ち上げた。
「負けねえぞ」
「勝つのは俺だよい」
「だからもう止めろってば!」
 そもそも、エースに会いたいと言って呼び出したのではないのか。そのエースをほったらかしてなんで二人で飲んでいるのだ。
「もーっ!これ以上飲むなら俺はもう帰るぞ!マルコのコトだって置いてっちまうぞ!!」
「待て待て!もうちょっとで俺が勝つから。そしたら目いっぱい可愛がってやるから待ってろ!」
「このバカ髪、ウチのエースに手ぇ出すんじゃねえよいっ!」
「ああん?なぁにがウチの、だ。エースはなぁ、俺のなの、お・れ・の」
 そう言ってシャンクスはエースの腕を引っ張った。
「うわっ!ちょっと、イテえよ、シャンクス」
 ぎゅうぎゅうと力づくで抱きしめてくるシャンクスから逃げようともがくエースを今度はマルコが引っ張る。
「んなっ!エース!!!こっちに来いッ!」
「い、イテてててっ!ちょっと、シャンクスッ!痛いっ!マルコも引っ張んな!痛ぇってば!」
「いいか、マルコ!エースはなぁ、お前らに会うずーっと前に俺が先にツバ付けたんだ!だから、俺のもんだ!」
「ふざけんなよいっ!エースはお前よりオヤジを選んだんだ!つまり、お前はとっくにフラレてんだよいっ!」
「んだとー!」
「やる気かよいっ!」
「ちょ、二人とも止めろっ!マルコも、止めろってば!ちょ……ベック!ベックーッ!!」
 この二人が喧嘩など始めたら洒落にならない。周りの男どもは笑うばかりで止める気はまるでないらしい。
「おわっ?」
 どこをどうしたのか、がっちりと抑えられていたはずのエースをベックマンがあっさりと救出した。
「あ、ありがと」
「二人とも、まだ飲む気か」
「「当たり前だ(よい)!」」
「そうか」
 深々と煙を吐き出した副船長はそのままエースを小脇に抱えた。
「なら、好きなだけ飲んでいろ」
「「ん??」」
 荷物のような抱え方でエースを持ったまま、くるりと踵を返した副船長はそのまま船室へと向かって行く。
「オイこらベック!どこ行くんだ」
「エースをどこに連れて行く気だよいっ!」
 慌てて追いかけようとするが、競い合って飲んでいた酒が足にキているらしく二人ともよろよろと歩くことすら覚束ない。
「おわっ!」
「くっ……」
 二人揃ってみっともなく甲板にズベッと転がった。
「そうだった、エース。ベッドに入る前にお頭に祝いを言ってやってくれ」
「ん?あ、そっか。誕生日おめでとう、おっさん」
 にこっとそれはそれは愛らしい笑顔でひらひらと手を振った。
「お、おい、ちょっと待てよいっ!」
 まさかの伏兵の登場に慌てるマルコと、俺も混ぜろと不謹慎なセリフを叫ぶシャンクスを置いて、エースを抱えたベックマンは船室へと消えて行ったのだった……

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