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火村誕。ショタアリス注意!R18
翌朝、火村が目覚めると隣で眠っていたはずのアリスの姿が無い。
どうしたのかとリビングに行くと、アリスはソファに座って珈琲を飲んでいた。
相変わらずのヤングサイズのアリスだ。アリスのシャツを着てGパンを履いている。昨日よりずっとすっきりした顔だ。火村は少し安心した。
「おはよう」
「おはよ。珈琲飲む?」
2人でキッチンに移動する。春らしい日差しがキッチンに差し込んでいてとても明るい。火村が来てくれたせいか随分とアリスは落ち着いたらしく、小さく鼻歌を歌っている。
「ああ。朝飯は?食ったか?」
「まだや。君が起きて来るの待ってた。サンドウィッチ作っておいたから一緒に食べよう」
珈琲と一緒にサンドウィッチの盛られた皿をテーブルに並べる。
「こっちがハム・チーズ、こっちが卵」
アリスが得意気に指差すと、火村は眉をひょいと上げて小さく口笛を吹いた。
「やるじゃないか。随分サービスがいいな」
「昨日約束すっぽかしたお詫びや」
火村の誕生日のお祝いも兼ねていたのにパニックになってしまってすっかり忘れていた。
「ふうん……たまにはすっぽかされるのもいいもんだな」
ニヤニヤと笑いながら火村がサンドウィッチを手に取った。辛子バタをたっぷり塗ったサンドウィッチが火村の好みだ。一口食べて、火村はまた眉を上下させた。
「うまいよ」
へへヘ、と照れ笑いをしてアリスもテーブルについた。パクリと一口食べてからアリスがぎゅ~っと顔をしかめた。
「どうした?」
「か、辛い……・」
味覚も子供になっているのを忘れていたようだ。慌てて飲んでいる珈琲も良く見ればアリスの好みとは違うミルクの入った珈琲だ。
「大丈夫か?」
「ん……。味覚まで、こんなに変わってもうたわ」
少し寂しそうに、アリスがそういった。火村は黙って立ち上がると、残っていたパンとチーズでアリス用の辛くないサンドウィッチを作ってやった。テーブルに持って行くと、さっきまでご機嫌だったアリスの顔が少し曇っている。
「大丈夫だよ、絶対に元に戻る」
火村はアリスの髪に軽く口付けた。アリスは火村の首に両手を回して火村の首筋に顔を埋めた。
「大丈夫だ」
「…………ん」
「…………よし!!さあ飯だ!」
「おう!」
食事を済ませて、リビングでだらだらと過ごす。2人ともこうやって何もせずに過ごすのが好きだ。2人でだらだらと(いちゃいちゃと?)していると火村の携帯が鳴った。表示を見ると「大阪府警森下」と出ている。
「フィールドワーク?」
首をかしげたアリスにちょっと待てとジェスチャーして、電話に出る。
「はい、そうですか。ええ……有栖川のマンションに。わかりました。……はい。……ではこれから向かいます」
難しい顔をした火村にアリスがどうした?と目で問いかけた。
「この前関わった事件について意見を聞きたいんだとさ」
「電話じゃあかんの?」
「ああ、資料を見てほしいって。そんなに時間はかからないと思うけど」
火村はジャケットを着ると車のキーを手に取った。ソファに座ったままのアリスを振り返ると、テーブルに置きっぱなしになっていた煙草をアリスが手渡した。
「ちょっと行って来る。どうする?」
「け、警察?」
「一人で待っているよりも出かけたほうがいいだろう?」
アリスは少し考えた後パーカーを手に取った。
「今着られる服、これくらいしかあらへんけど……ええかな?」
「構わないさ」
春らしい日差しの下で、府警の桜が咲いている。そういえば花見をしようといっていたのにな、と思ってアリスが火村を見ると、火村も同じことを思っていたらしく目が合った。
「早く終わったら夜桜でも観に行くか?」
唇の端を軽くあげてそういった火村の後を少し弾むような足取りでアリスはついていった。
「ああ、火村先生、お待ちしてました」
出迎えてくれた森下刑事は火村に頭を下げた後に、アリスを見た。
「……??……・・あの……」
「有栖川の甥っ子の瓜太郎です。ちょっと事情があってこれから一緒に出かけることになっていまして」
「う、ウリ?」
びっくりして小さく声を上げたアリスの腕を火村がつつく。
「え、ああ……こ、こんにちはぁ」
ペコリと頭を下げたアリスを目を丸くして見た森下は合点がいったというように頷いた。
「ああ……道理でよく似ていらっしゃると。有栖川さんは締め切りですか?」
「ええ……相変わらず締め切りを破って編集者を泣かせてますよ。それで私が彼を連れ出すことになったんです」
アリスはギッと火村を睨みつけた。『締め切りなんて破ってへん!』口には出さないけれどそう言いたいのは良くわかるので火村は笑いをかみ殺した。
「それで、終わるまで待たせてもらってもいいですか?おとなしくしてると思うので」
「構いませんよ。資料室に入ってもらうわけにはいきませんけど……」
にっこりと笑った森下にアリスも仕方なく笑みを見せた。
資料室では鮫山警部補が待っていた。テーブルの上に山ほど詰まれた資料に埋もれている姿は本物の学者のようだった。
「ああ……火村先生、どうも」
眼鏡を押し上げて火村のほうに頭を下げた。
「……その子は?」
アリスを見咎めたのだろう。こんなところに来るにはまだ若すぎる。テーブルに広げられた殺人現場の写真をさりげなく身体で隠す
「有栖川さんの甥子さんだそうです。良く似てますよね、おっきな目とか、ふわふわの猫ッ毛とか」
元気よく森下が答えた。
「ああ……そういえば……・・じゃあ、有栖川さんもいらしてるんですか?」
「いえ、今日は彼だけです。これから一緒に出かける予定でして」
火村はさっさとテーブルについて資料に目を通しはじめた。さっさと終えてアリスと夜桜を観に行くのだ。
「さて、始めましょう」
「そうですね、あまり待たせるのは申し訳ないですし。森下、有栖川くんをご案内してくれ」
「はい。じゃ、行こうか、瓜太郎君」
瞬間、火村が噴出しそうになる。
「いい子にしてろよ、ウリ」
「……・・は~い、わかりましたぁ。火村のオ・ヂ・サ・ン」
手を上げて、わざとらしくにっこりと笑ったアリスの頬を火村がムニニニニ、と抓る。
「いだだだっ!!あにすんのっ」
「可愛げの無い口だな。少し矯正したほうがいいんじゃないか?」
「いひゃいって!森下さんっ!虐待現場ですっ!!捕まえたって!!」
「教育的指導だっ」
森下になだめられてやっと火村が手を離すと、アリスの頬は真っ赤になっていた。資料室から出て行くときに火村の影を思い切り踏みつけてから森下の後を追いかける。
「まるで有栖川さんと火村先生のやり取りみたいやね。瓜太郎君も火村先生と仲がええの?」
「え……えっと……うん、まあ結構仲ええのかなぁ……」
隣に並んだアリスに森下ひょいと手を伸ばした。急に頬に触れられてちょっと驚いたアリスに森下が笑いかける。
「ほっぺた、大丈夫?真っ赤だけど」
「あ、はい。大丈夫です。慣れとるし」
さりげなく森下の手を避けてほっぺたを自分の両手で包んだ。別に森下に触られたくないわけじゃないけれど、本当は自分よりも年下の知り合いに、子供のように触れられるのはなんだか気恥ずかしいのだ。
「でも、ほんまに良う似てはるなあ。きっと大人になったら有栖川さんみたいになるんやろうね」
「あはははは……よう言われます」
そりゃそうだ。
アリスはなんとも言えずに乾いた笑いを漏らした。
府警からの帰りに少し寄り道をした。
「ここの桜、前に見に来たことがあるな」
「ああ…………アリスが作家デビューした年だ」
火村が講師になった年、アリスもまた作家としての第一歩を踏み出した。
火村の誕生日のお祝いも兼ねて二人で飲みに行ったのだ。その帰りにほろ酔い加減で2人で桜を観に。当時のアリスのアパートの近くにあった空き家の庭に、大きな桜の木があった。
空き家も、桜の木も昔のままで、そこだけ時が止まったかのようだ。火村がふと視線を移すと、あのときよりもずっと小さなアリスの姿。時が止まったのではなく、巻き戻っている。
「こんな場所の空き家がよく残っているな」
「ここの主人だった人の遺言やって。桜の木が倒れるまでは、この家もこのまま残すようにって」
本当は入ってはいけない私有地だけれど、こっそりと入り込んだ。神戸に嫁に行ったという娘は、遺言を守っているけれどそれほど厳重にこの家を管理しているわけではないらしい。この時期は、昼間だけ近所の人にこの桜を解放しているそうで、アリスも近くのアパートにいたころに大家さんに誘われて、アパートのみんなとここで宴会をしたことがある。
「お前のところの大家も、うちのばあちゃんに負けず劣らず世話好きだったもんな」
その大家さんも、今はもういない。けれど相変わらずこの時期はこの空き家は開放されているらしい。この時間にはもう門は施錠されているけれど、空き家の縁側が空けたままになっていた。
「いくらなんでも開放しすぎじゃねえか?これじゃタチの悪いのが入り込むぜ?」
「俺たちみたいなのが?」
アリスがケラケラと笑った。
「…………そうだよ」
火村も笑いながらアリスを抱きしめた。桜の木が夜空に良く映えている。縁台に腰をかけ、2人で寝転ぶ。
「少し寒いな」
4月も半ばだ。まだ寒いのは仕方が無い。
「あほっ。桜を見に来たんやろ?それに……俺は今、子供やで?」
髪や首にキスをする火村を押しとどめると、火村がくぐもった声で笑った。
「中身はアリスなんだろう?」
「……そうやけど」
するりとTシャツに火村の手が入り込む。アリスの肌が僅かに粟立った。
「いややっ、冷たい……」
「すぐに気にならなくなるさ」
シャツを捲り上げて胸や腹にキスを落とす。いつもよりもずっと小さな身体に桜の花びらよりも濃い花びらが散っていく。
「ん……やぁ……こんなとこでほんとにする気かっ……あっ」
丹念に愛撫を繰り返すと愛撫をしらない身体はすぐに少しかすれた高い声が零し始めた。胸元の飾りに軽く歯を立てると、アリスの指が火村の髪をギュッと握った。
「あんっ……・やあっ……はぁっ……」
「アリス、ほら、腰上げて」
火村がアリスのGパンを引き抜いた。大きすぎるGパンはほとんど抵抗もなくアリスの足から脱がされていく。まだ子供の域を出ていない未成熟な身体は、少年期独特の柔らかさと硬さを同時に併せ持つ。
「なんだか……妙な気分になるな……」
「……ん……あ?」
「子供にイケナイコト教えてる気分だ」
「ア……ホか……」
ニヤリと笑った火村の頭を軽くはたく。
こんなところでこんなことをして、誰かが自分たちのように夜桜を観に入り込んでくるかもしれない。見た目はまだ子供のアリスにこんなことをしているところを見られたら、完全に強制猥褻で大阪府警に逆戻りだ。
あっという間に裸にされ、素肌に夜風が当たる。
胸元を探っていた掌がゆっくりと喉元まで滑り、再び胸をたどって腰の辺りに下りてくる。
僅かに抗ったアリスの頭を抑えて、唇を塞いだ。息が上がるほど濃密な口付けにアリスの抵抗が弱まる。遠慮なく絡められる舌にアリスが応え始めたころ、火村はアリスの下着をゆっくりと引き下ろした。下着越しではなく、直に触れられてアリスの身体が大きく跳ねる。
「んっ……・」
唇を離してアリスの顔を見ると、長いまつげに縁取られた大きな目を潤ませながら睨みつけていた。幼さを残す顔でそんな風に睨まれると奇妙な興奮が火村を包んだ。
「……お稚児趣味はねえはずなんだけどなあ」
すべすべとした内股を何度も撫でる。そのたびに薄く開かれたアリスの唇からかすれた声が漏れる。
むき出しになったアリスを爪で形をなぞるようにすると、内股がきつく閉じられて火村の腕を挟みこむ。無理やりに足を開かせて身体を割り込ませると、すっかりと形を変えているアリスの熱が小さく震えた。
足を開かせた状態で上から眺めていると、何もしてこない火村を不審に思ったらしいアリスと目が合った。
「な……んやねんっ……するならサボってないでさっさとせいや」
「いやあ……なんていうか…………興奮するなあ」
ニヤニヤと笑いながら身をかがめて、アリスの熱に舌を這わせた。わざと音を立てながら舐めあげる。液体をこぼし始めた先端のくぼみに、ちゅ、と口付けると、アリスの腹がヒクヒクと痙攣した。
零れだした液体と唾液を指ですくって、何度もアリスの後ろに塗りつける。このアリスの身体はまだ開拓されたことが無いはずだから、十分にほぐしてやらなければ酷いことになるだろう。襞を爪で引っかくようにして何度もノックする。それでも緩む気配の無い菊華にじれて、火村はフッと息を吹きかけた。
「あっ……いやぁっ……・」
知っているけれど知らない感覚に、アリスが悲鳴を上げる。
火村は構わずに舌を這わせる。尖らせた舌先を何度も押し付けては後華と前の熱の間の柔らかい部分を舌で舐めあげる。後ろを愛撫されながら前も指で弄られる感覚にアリスはぼろぼろと涙を流しながら首を振った。
「アリス……指入れるから、力抜いてろ」
わけのわからないままにアリスは火村の愛撫に身を任せた。
ゆっくりと、中を傷つけないように火村が指を挿入する。ぎゅうぎゅうと締め付けてくる感覚に眉を顰めた。熱い内部が火村を煽る。
指を入れたまま身を起こした火村は、涙でくしゃくしゃになったアリスの頬や米神にキスをする。中に含まされた指が起こすいたずらに、たまらずアリスは火村にしがみついた。
「も……おねが……いっ……ひむっ……」
首筋に湿った吐息が触れる。火村は後ろに入れていた指をゆっくりと引き抜くと、指を増やして再び押し入れた。先ほどよりもずっと激しく締め付けるアリスに、ごくりと喉を鳴らす。
「すっげぇな……」
初めて抱いたときを思い出させるような激しい締め付けに、火村は既に猛っている自身を押し付けた。スラックスの前を開けてシャツを開いただけの姿にアリスが恨み言を漏らす。
2本、3本と指を増やし、時間をかけて蕩かしたアリスの後ろに自分の熱源を押し付けた。
「あ……ああ……ああっ・・」
指とは全然違う質量のものが入り込んでくる痛みに呻きながらも、耳元で聞こえる火村の荒い息にアリスは興奮で唇を振るわせる。しがみつく指にも力が入り、火村のシャツを握り締める。
「痛いか?」
「ん……平気や……」
「ああ……・」
アリスの吐息を汲み取りながら、腰を動かし始める。もどかしいまでの優しい注挿に先にじれたのはアリスのほうだった。腰を振ってねだる。
「もっ……もうすこしっ……激しくても……ええからっ……・んっ……」
高い声でのかわいらしいお願いに、顰めていた眉が一瞬緩む。
「きつくないか?随分サービスがいいじゃないか」
嫌がっていたわりに、あっさりと出たオーケーに火村が意地悪く茶化すと、アリスが激しいキスで濡れた唇を尖らせた。
「君……あしたっ……誕生日……」
そういえば、昨日は誕生日だったな、と思い出す。アリスが一緒じゃなければ思い出しもしない記念日は、出会ってから14年間一度も忘れられたことが無い。
「好きに……してっ……ええよっ……」
「っつ……・」
思いもかけない色っぽい台詞を、幼い顔で言われればたまらない。いつもよりもキツイ締め付けと相まってあっという間に火村を限界に近づける。
「くそっ……・」
打ち付けるようにして激しく中をかき混ぜる。そのたびに苦痛ばかりだった声が嬌声に変わっていく。グッと持ち上げるようにして対面座位に体位を変えると、アリスは悔しそうに睨みつけた後で自分から動き始めた。腰を上げ、恐る恐るまた腰を下ろす。入り込んでくる楔の形がありありとわかる。
「あっ……はぁっ……あっ……あっ……」
火村は細い腰を抱き寄せた。いつもならこの体勢だと少し上にアリスの顔があるけれど、今日は目の前にアリスの顔がある。目の前で上下する唇に何度もキスを落とす。
「んっ……あっ・・火村ッ……・火村ッ……・」
何度も高みを味わいながらも動こうとしない火村にアリスが懇願する。
「あっ……もうっ……イかせてっ……」
再びアリスを仰向けに寝かせると、足首を持って肩に担ぎ上げ、アリスの身体を折り曲げるようにして腰を打ちつける。容赦の無い攻め立てに、アリスが声を上げる。
「やぁぁぁっ……・」
甲高い嬌声とともに、アリスが一際激しく痙攣して、火村を締め付けた。
「うっつぅ……」
ゆっくりと弛緩したアリスをがくがくとゆすって火村はアリスの中に熱を放った。
かろうじて屋根があるとはいえ、開け放された縁側という一歩踏み出せば屋外という場所で淫猥な行為にふけってしまった。(それも結構長い時間だ)
中身のアリスは何度も経験しているけれど入れ物のアリスは初めての行為だったわけで、かなり身体に負担がかかったようで、コトが終わった後アリスは気を失うようにして眠ってしまった。
「こんな場所でこんな子供に……何やってんだよ、俺は」
火村はアリスの身体を拭いてやってから抱きかかえて車に戻った。周囲に気を配って、誰もいないのを確認してから、門のすぐ外においてあった車にアリスを乗せる。こんなところで気を失った子供を車に乗せているところを誰かに見られたら間違いなく通報されてしまう。まして、アリスの身体のあちこちには情交の跡が生々しく残っているのだから。
シートを倒してアリスを寝かせてやって、ジャケットをかけてやる。月明かりでははっきりわからないけれどどうもアリスの顔色が悪い。おとなしくしているアリスに調子に乗って無理をさせすぎた。
マンションの駐車場で空き家の門の鍵を開けたままにしてきてしまったことに気がついた。
「ま、いいか。あんな南京錠その気になりゃすぐ開けられるし、あっても無くても同じようなもんだな」
実際火村もすぐに南京錠を開けてしまった。コツさえ知っていればすぐに開けられてしまうものなのだ。
助手席に回ってアリスの様子をみると、アリスは丸まってよく眠っている。そっと手を伸ばして額に手を当ててみる。幸い熱は出ていないようだ。起こさないように気をつけながら抱き上げてエレベータに乗る。
標準よりは小さいとはいえ、中学生の男の子を抱き上げていくのはなかなかに体力がいる。ずりずりと落ちてくるのをゆすりあげて抱えなおすとアリスが目を覚ました。
「……・ん?」
「悪い、起こした……大丈夫か?」
「ん、大丈夫。歩けるから降ろして?」
もぞもぞとするアリスをそろそろと降ろす。少しふらついているけれどエレベータの壁に寄りかかれればどうにか立っていられるようだ。うつむいてぼんやりしているアリスをそっと抱き寄せると少し恥ずかしそうにアリスが身を寄せてきた。
「桜、碌に見れへんかったなあ」
「そうか?俺は結構見たぜ?」
「そうなんか?ええなあ~」
そういって見上げた火村の顔がニヤニヤと笑っているのをみて、アリスがちょっと首をかしげ、それから嫌そうに唇をゆがめる。
「なんや、いやぁな笑い方やなぁ……なんやねん」
「いや、お前もしばらくは見られると思うよ?桜の花」
「??」
「風呂場で鏡を見れば」
初めはわからなかったようだけれど、不審げだったアリスの顔が徐々に赤くなっていく。
「なにをっ……何を言うてんねんっ!このアホッ!」
火村はアリスの耳元に顔を近づけて囁いた。
「なんで?綺麗だぜ?」
「なっ……なっ……」
ゆっくりとエレベータが止まる。
火村はグイっとアリスを抱き寄せると怒りでわなわなと震えているアリスの唇に自分の唇を押し付けた。
「……んっ……」
扉が開くのと同時に、アリスは火村を押しのけるとよろよろとよろけながらエレベータから飛び出した。
「おい、まだ走ると危ないぞ」
深夜とはいえいつ扉が開くかわからないタイミングであんなことをするなんてっ。しかもここは火村もしょっちゅう入り浸っているアリスのマンションなのに。
「誰も見ちゃいないって。それに今のお前見たってすぐにはアリスだって思わないさ」
よろけるアリスにすぐに手を伸ばせるくらいの距離をとりながら後ろをついてきた火村がのんびりとそう言う。
確かに今の姿ならアリスは大丈夫かもしれないけれど、真野さんや管理人さんは火村の顔を知っているのだから、深夜のエレベータで未成年にキスをしていたところを見られたら困るのは火村のほうなのにっ。
「そんなへまやらかすかよ」
火村が笑った。かなりご機嫌なようだ。
ぷりぷりしながら部屋に入ってリビングにたどり着くなりアリスはソファに倒れこんでしまった。
「ダルイ~……」
「風呂は?入りたいだろう?」
「ん~……」
「入れてやろうか?」
火村の言い方が茶化すような言い方ではなく、真面目な口調だったのでアリスは少し考えてから聞いてみた。
「…………へんなこと、せえへん?」
「信用ねえなあ。しないよ。今日はこれ以上したらお前壊れちまうよ」
苦笑いしながらそういった火村に、にっこりと笑ってアリスが火村に手を伸ばした。
「誕生日はもう過ぎたし。今度は火村が俺にサービスするんやな」
「大サービスだ」
火村は笑いながらアリスを抱き上げて、バスルームに連れて行った。
火村は約束どおりに「ヘンナコト」はしないで、壊れ物を扱うようにアリスを風呂に入れた。
アリスはベッドまで運ぶという火村から逃げるようにして寝室まで歩いていった。
確かにいつもよりはずっと大変だったけれど、もう数え切れなくらい身体を重ねてきた火村の抱き方は良く知っているから初めてのときほど酷い状態じゃない。そういえば初めて火村としたときも、終わった後に火村は大事に大事に風呂に入れてくれたなあ、と思い出してアリスはクスッと笑った。
火村の腕に抱きかかえられるようにしてベッドで2人で横になる。押し寄せる眠気にたゆたいながらアリスは不安に思っていたことをそっと口にした。
「なぁ、火村。……もし、俺が元に戻れへんかったら、どうするん?」
「ん~……そうだなあ……とにかく一度はアリスの両親に会いに行かなくちゃなあ」
「?あ~、うん、まあそうやけど。そうやなくて……その、俺とのこと……」
「だからさ、お前を俺が引き取るってコトをきちんと言いに行かなきゃいけないだろう?」
「…………うん」
まだ湿ったままの髪に指を絡めてグッと頭を抱き寄せた。火村の胸が湿ってくる。それが濡れた髪のせいではないことはわかったけれど、火村は黙ってアリスの頭を抱きしめ続けた。
翌朝、火村が目を覚ますと、腕の中に納まっていたはずのアリスが収まりきらないサイズになっていた。
「…………戻ってる」
昨日の夜、眠りにつく前にアリスに言った言葉は本気だった。
もし、アリスが元に戻れなければ、火村はアリスを自分の手元に引き取るつもりだったのだ。いくら中身は大人でも外見があれでは一人暮らしはできないし、対外的には学校にも行かなくてはいけないだろう。両親とともに再び生活するのが普通かもしれないけれど、そうなればもう今までのようにアリスと2人だけの時間を持つのは難しくなってくるだろう。ならばちゃんとご両親に説明して自分のところに引き取ろう。ばあちゃんもびっくりするだろうけれど、きっと歓迎してくれるはずだ。
そう告げた火村の腕の中でアリスは声も無く泣いていた。明るく振舞っていても不安だらけだったはずだ。
それだけで、腕の中の存在を絶対に守りぬかなければいけないと、そう思っていたのだ。
すうすうと寝息を立てているアリスの前髪をそっと掻きあげる。現れたのは見慣れた同い年のアリスの顔だ。丸くなって眠っている姿は変わらないけれど。
ほっとすると同時になんだか少しもったいなかったような気もする。もう2,3日、一緒にいられたら良かったのに、なんて。
昨日はやりすぎたと思ったりしたけど、子供のアリスとするチャンスなんてもう無いかもしれないのだから(あっても困るし)もうちょっとじっくり味わっても良かったかも。
あらわになった額にそっと唇を押し付けた。柔らかい猫ッ毛は幼いころのまま。目を覚ませば昨日見たアリスを思い出させる大きな目でくるくると表情を変えるのだろう。
アリスが祝ってくれる以外には意味なんて大して感じられない誕生日だけれど、今年の誕生日は本当に印象的だった。別に稚児趣味があるわけじゃないけど、写真でちらりと見ただけの、火村が知らないアリスに会ってみたかったとずっと思っていたのだ。あんなにかわいらしいアリスに出会えたのは最高のプレゼントだ。
まあそんな風に思えるのも元に戻れたアリスを目にしているからだけれど。
「む……むう……・」
もぞもぞとアリスが身じろぎした。長めの髪に寝癖がついている。昨日、シャワーを浴びたあとにちゃんと乾かさないで寝たからだ。
「おはよう」
「…………おはよう…………」
返ってきた声も、少しかすれているけれど聞きなじんだ声。自然と頬が緩む。
「良かったな、戻ってるぜ?」
「……?」
ショボショボと目をさせながらぼけっとしたままのアリスに火村はクスッと笑うと、ほら、と布団を捲り上げた。寝る前はぶかぶかだったはずのTシャツとトランクスが、ちゃんと身体にあったサイズになっている。
「……・あ」
ペタペタと顔や手足を触ってから「うひゃあ」とか何とか小さく叫んで火村に抱きついた。
「戻ってる!……・ん?……・・??」
ぎゅうっと抱きついた感覚に、アリスが首をかしげた。なんだか……ちょっと……・
「火……火村?……君……・」
「なんだ?」
恐る恐る身体を離して、火村を見つめた。
「…………」
「なんだよ?」
初めは、自分が大人に戻ったからそう感じたのかな?とも思ったけれど。
やっぱり気のせいなんかじゃない。
「火村……君……・・それ、何歳くらいや?」
どうしたのかとリビングに行くと、アリスはソファに座って珈琲を飲んでいた。
相変わらずのヤングサイズのアリスだ。アリスのシャツを着てGパンを履いている。昨日よりずっとすっきりした顔だ。火村は少し安心した。
「おはよう」
「おはよ。珈琲飲む?」
2人でキッチンに移動する。春らしい日差しがキッチンに差し込んでいてとても明るい。火村が来てくれたせいか随分とアリスは落ち着いたらしく、小さく鼻歌を歌っている。
「ああ。朝飯は?食ったか?」
「まだや。君が起きて来るの待ってた。サンドウィッチ作っておいたから一緒に食べよう」
珈琲と一緒にサンドウィッチの盛られた皿をテーブルに並べる。
「こっちがハム・チーズ、こっちが卵」
アリスが得意気に指差すと、火村は眉をひょいと上げて小さく口笛を吹いた。
「やるじゃないか。随分サービスがいいな」
「昨日約束すっぽかしたお詫びや」
火村の誕生日のお祝いも兼ねていたのにパニックになってしまってすっかり忘れていた。
「ふうん……たまにはすっぽかされるのもいいもんだな」
ニヤニヤと笑いながら火村がサンドウィッチを手に取った。辛子バタをたっぷり塗ったサンドウィッチが火村の好みだ。一口食べて、火村はまた眉を上下させた。
「うまいよ」
へへヘ、と照れ笑いをしてアリスもテーブルについた。パクリと一口食べてからアリスがぎゅ~っと顔をしかめた。
「どうした?」
「か、辛い……・」
味覚も子供になっているのを忘れていたようだ。慌てて飲んでいる珈琲も良く見ればアリスの好みとは違うミルクの入った珈琲だ。
「大丈夫か?」
「ん……。味覚まで、こんなに変わってもうたわ」
少し寂しそうに、アリスがそういった。火村は黙って立ち上がると、残っていたパンとチーズでアリス用の辛くないサンドウィッチを作ってやった。テーブルに持って行くと、さっきまでご機嫌だったアリスの顔が少し曇っている。
「大丈夫だよ、絶対に元に戻る」
火村はアリスの髪に軽く口付けた。アリスは火村の首に両手を回して火村の首筋に顔を埋めた。
「大丈夫だ」
「…………ん」
「…………よし!!さあ飯だ!」
「おう!」
食事を済ませて、リビングでだらだらと過ごす。2人ともこうやって何もせずに過ごすのが好きだ。2人でだらだらと(いちゃいちゃと?)していると火村の携帯が鳴った。表示を見ると「大阪府警森下」と出ている。
「フィールドワーク?」
首をかしげたアリスにちょっと待てとジェスチャーして、電話に出る。
「はい、そうですか。ええ……有栖川のマンションに。わかりました。……はい。……ではこれから向かいます」
難しい顔をした火村にアリスがどうした?と目で問いかけた。
「この前関わった事件について意見を聞きたいんだとさ」
「電話じゃあかんの?」
「ああ、資料を見てほしいって。そんなに時間はかからないと思うけど」
火村はジャケットを着ると車のキーを手に取った。ソファに座ったままのアリスを振り返ると、テーブルに置きっぱなしになっていた煙草をアリスが手渡した。
「ちょっと行って来る。どうする?」
「け、警察?」
「一人で待っているよりも出かけたほうがいいだろう?」
アリスは少し考えた後パーカーを手に取った。
「今着られる服、これくらいしかあらへんけど……ええかな?」
「構わないさ」
春らしい日差しの下で、府警の桜が咲いている。そういえば花見をしようといっていたのにな、と思ってアリスが火村を見ると、火村も同じことを思っていたらしく目が合った。
「早く終わったら夜桜でも観に行くか?」
唇の端を軽くあげてそういった火村の後を少し弾むような足取りでアリスはついていった。
「ああ、火村先生、お待ちしてました」
出迎えてくれた森下刑事は火村に頭を下げた後に、アリスを見た。
「……??……・・あの……」
「有栖川の甥っ子の瓜太郎です。ちょっと事情があってこれから一緒に出かけることになっていまして」
「う、ウリ?」
びっくりして小さく声を上げたアリスの腕を火村がつつく。
「え、ああ……こ、こんにちはぁ」
ペコリと頭を下げたアリスを目を丸くして見た森下は合点がいったというように頷いた。
「ああ……道理でよく似ていらっしゃると。有栖川さんは締め切りですか?」
「ええ……相変わらず締め切りを破って編集者を泣かせてますよ。それで私が彼を連れ出すことになったんです」
アリスはギッと火村を睨みつけた。『締め切りなんて破ってへん!』口には出さないけれどそう言いたいのは良くわかるので火村は笑いをかみ殺した。
「それで、終わるまで待たせてもらってもいいですか?おとなしくしてると思うので」
「構いませんよ。資料室に入ってもらうわけにはいきませんけど……」
にっこりと笑った森下にアリスも仕方なく笑みを見せた。
資料室では鮫山警部補が待っていた。テーブルの上に山ほど詰まれた資料に埋もれている姿は本物の学者のようだった。
「ああ……火村先生、どうも」
眼鏡を押し上げて火村のほうに頭を下げた。
「……その子は?」
アリスを見咎めたのだろう。こんなところに来るにはまだ若すぎる。テーブルに広げられた殺人現場の写真をさりげなく身体で隠す
「有栖川さんの甥子さんだそうです。良く似てますよね、おっきな目とか、ふわふわの猫ッ毛とか」
元気よく森下が答えた。
「ああ……そういえば……・・じゃあ、有栖川さんもいらしてるんですか?」
「いえ、今日は彼だけです。これから一緒に出かける予定でして」
火村はさっさとテーブルについて資料に目を通しはじめた。さっさと終えてアリスと夜桜を観に行くのだ。
「さて、始めましょう」
「そうですね、あまり待たせるのは申し訳ないですし。森下、有栖川くんをご案内してくれ」
「はい。じゃ、行こうか、瓜太郎君」
瞬間、火村が噴出しそうになる。
「いい子にしてろよ、ウリ」
「……・・は~い、わかりましたぁ。火村のオ・ヂ・サ・ン」
手を上げて、わざとらしくにっこりと笑ったアリスの頬を火村がムニニニニ、と抓る。
「いだだだっ!!あにすんのっ」
「可愛げの無い口だな。少し矯正したほうがいいんじゃないか?」
「いひゃいって!森下さんっ!虐待現場ですっ!!捕まえたって!!」
「教育的指導だっ」
森下になだめられてやっと火村が手を離すと、アリスの頬は真っ赤になっていた。資料室から出て行くときに火村の影を思い切り踏みつけてから森下の後を追いかける。
「まるで有栖川さんと火村先生のやり取りみたいやね。瓜太郎君も火村先生と仲がええの?」
「え……えっと……うん、まあ結構仲ええのかなぁ……」
隣に並んだアリスに森下ひょいと手を伸ばした。急に頬に触れられてちょっと驚いたアリスに森下が笑いかける。
「ほっぺた、大丈夫?真っ赤だけど」
「あ、はい。大丈夫です。慣れとるし」
さりげなく森下の手を避けてほっぺたを自分の両手で包んだ。別に森下に触られたくないわけじゃないけれど、本当は自分よりも年下の知り合いに、子供のように触れられるのはなんだか気恥ずかしいのだ。
「でも、ほんまに良う似てはるなあ。きっと大人になったら有栖川さんみたいになるんやろうね」
「あはははは……よう言われます」
そりゃそうだ。
アリスはなんとも言えずに乾いた笑いを漏らした。
府警からの帰りに少し寄り道をした。
「ここの桜、前に見に来たことがあるな」
「ああ…………アリスが作家デビューした年だ」
火村が講師になった年、アリスもまた作家としての第一歩を踏み出した。
火村の誕生日のお祝いも兼ねて二人で飲みに行ったのだ。その帰りにほろ酔い加減で2人で桜を観に。当時のアリスのアパートの近くにあった空き家の庭に、大きな桜の木があった。
空き家も、桜の木も昔のままで、そこだけ時が止まったかのようだ。火村がふと視線を移すと、あのときよりもずっと小さなアリスの姿。時が止まったのではなく、巻き戻っている。
「こんな場所の空き家がよく残っているな」
「ここの主人だった人の遺言やって。桜の木が倒れるまでは、この家もこのまま残すようにって」
本当は入ってはいけない私有地だけれど、こっそりと入り込んだ。神戸に嫁に行ったという娘は、遺言を守っているけれどそれほど厳重にこの家を管理しているわけではないらしい。この時期は、昼間だけ近所の人にこの桜を解放しているそうで、アリスも近くのアパートにいたころに大家さんに誘われて、アパートのみんなとここで宴会をしたことがある。
「お前のところの大家も、うちのばあちゃんに負けず劣らず世話好きだったもんな」
その大家さんも、今はもういない。けれど相変わらずこの時期はこの空き家は開放されているらしい。この時間にはもう門は施錠されているけれど、空き家の縁側が空けたままになっていた。
「いくらなんでも開放しすぎじゃねえか?これじゃタチの悪いのが入り込むぜ?」
「俺たちみたいなのが?」
アリスがケラケラと笑った。
「…………そうだよ」
火村も笑いながらアリスを抱きしめた。桜の木が夜空に良く映えている。縁台に腰をかけ、2人で寝転ぶ。
「少し寒いな」
4月も半ばだ。まだ寒いのは仕方が無い。
「あほっ。桜を見に来たんやろ?それに……俺は今、子供やで?」
髪や首にキスをする火村を押しとどめると、火村がくぐもった声で笑った。
「中身はアリスなんだろう?」
「……そうやけど」
するりとTシャツに火村の手が入り込む。アリスの肌が僅かに粟立った。
「いややっ、冷たい……」
「すぐに気にならなくなるさ」
シャツを捲り上げて胸や腹にキスを落とす。いつもよりもずっと小さな身体に桜の花びらよりも濃い花びらが散っていく。
「ん……やぁ……こんなとこでほんとにする気かっ……あっ」
丹念に愛撫を繰り返すと愛撫をしらない身体はすぐに少しかすれた高い声が零し始めた。胸元の飾りに軽く歯を立てると、アリスの指が火村の髪をギュッと握った。
「あんっ……・やあっ……はぁっ……」
「アリス、ほら、腰上げて」
火村がアリスのGパンを引き抜いた。大きすぎるGパンはほとんど抵抗もなくアリスの足から脱がされていく。まだ子供の域を出ていない未成熟な身体は、少年期独特の柔らかさと硬さを同時に併せ持つ。
「なんだか……妙な気分になるな……」
「……ん……あ?」
「子供にイケナイコト教えてる気分だ」
「ア……ホか……」
ニヤリと笑った火村の頭を軽くはたく。
こんなところでこんなことをして、誰かが自分たちのように夜桜を観に入り込んでくるかもしれない。見た目はまだ子供のアリスにこんなことをしているところを見られたら、完全に強制猥褻で大阪府警に逆戻りだ。
あっという間に裸にされ、素肌に夜風が当たる。
胸元を探っていた掌がゆっくりと喉元まで滑り、再び胸をたどって腰の辺りに下りてくる。
僅かに抗ったアリスの頭を抑えて、唇を塞いだ。息が上がるほど濃密な口付けにアリスの抵抗が弱まる。遠慮なく絡められる舌にアリスが応え始めたころ、火村はアリスの下着をゆっくりと引き下ろした。下着越しではなく、直に触れられてアリスの身体が大きく跳ねる。
「んっ……・」
唇を離してアリスの顔を見ると、長いまつげに縁取られた大きな目を潤ませながら睨みつけていた。幼さを残す顔でそんな風に睨まれると奇妙な興奮が火村を包んだ。
「……お稚児趣味はねえはずなんだけどなあ」
すべすべとした内股を何度も撫でる。そのたびに薄く開かれたアリスの唇からかすれた声が漏れる。
むき出しになったアリスを爪で形をなぞるようにすると、内股がきつく閉じられて火村の腕を挟みこむ。無理やりに足を開かせて身体を割り込ませると、すっかりと形を変えているアリスの熱が小さく震えた。
足を開かせた状態で上から眺めていると、何もしてこない火村を不審に思ったらしいアリスと目が合った。
「な……んやねんっ……するならサボってないでさっさとせいや」
「いやあ……なんていうか…………興奮するなあ」
ニヤニヤと笑いながら身をかがめて、アリスの熱に舌を這わせた。わざと音を立てながら舐めあげる。液体をこぼし始めた先端のくぼみに、ちゅ、と口付けると、アリスの腹がヒクヒクと痙攣した。
零れだした液体と唾液を指ですくって、何度もアリスの後ろに塗りつける。このアリスの身体はまだ開拓されたことが無いはずだから、十分にほぐしてやらなければ酷いことになるだろう。襞を爪で引っかくようにして何度もノックする。それでも緩む気配の無い菊華にじれて、火村はフッと息を吹きかけた。
「あっ……いやぁっ……・」
知っているけれど知らない感覚に、アリスが悲鳴を上げる。
火村は構わずに舌を這わせる。尖らせた舌先を何度も押し付けては後華と前の熱の間の柔らかい部分を舌で舐めあげる。後ろを愛撫されながら前も指で弄られる感覚にアリスはぼろぼろと涙を流しながら首を振った。
「アリス……指入れるから、力抜いてろ」
わけのわからないままにアリスは火村の愛撫に身を任せた。
ゆっくりと、中を傷つけないように火村が指を挿入する。ぎゅうぎゅうと締め付けてくる感覚に眉を顰めた。熱い内部が火村を煽る。
指を入れたまま身を起こした火村は、涙でくしゃくしゃになったアリスの頬や米神にキスをする。中に含まされた指が起こすいたずらに、たまらずアリスは火村にしがみついた。
「も……おねが……いっ……ひむっ……」
首筋に湿った吐息が触れる。火村は後ろに入れていた指をゆっくりと引き抜くと、指を増やして再び押し入れた。先ほどよりもずっと激しく締め付けるアリスに、ごくりと喉を鳴らす。
「すっげぇな……」
初めて抱いたときを思い出させるような激しい締め付けに、火村は既に猛っている自身を押し付けた。スラックスの前を開けてシャツを開いただけの姿にアリスが恨み言を漏らす。
2本、3本と指を増やし、時間をかけて蕩かしたアリスの後ろに自分の熱源を押し付けた。
「あ……ああ……ああっ・・」
指とは全然違う質量のものが入り込んでくる痛みに呻きながらも、耳元で聞こえる火村の荒い息にアリスは興奮で唇を振るわせる。しがみつく指にも力が入り、火村のシャツを握り締める。
「痛いか?」
「ん……平気や……」
「ああ……・」
アリスの吐息を汲み取りながら、腰を動かし始める。もどかしいまでの優しい注挿に先にじれたのはアリスのほうだった。腰を振ってねだる。
「もっ……もうすこしっ……激しくても……ええからっ……・んっ……」
高い声でのかわいらしいお願いに、顰めていた眉が一瞬緩む。
「きつくないか?随分サービスがいいじゃないか」
嫌がっていたわりに、あっさりと出たオーケーに火村が意地悪く茶化すと、アリスが激しいキスで濡れた唇を尖らせた。
「君……あしたっ……誕生日……」
そういえば、昨日は誕生日だったな、と思い出す。アリスが一緒じゃなければ思い出しもしない記念日は、出会ってから14年間一度も忘れられたことが無い。
「好きに……してっ……ええよっ……」
「っつ……・」
思いもかけない色っぽい台詞を、幼い顔で言われればたまらない。いつもよりもキツイ締め付けと相まってあっという間に火村を限界に近づける。
「くそっ……・」
打ち付けるようにして激しく中をかき混ぜる。そのたびに苦痛ばかりだった声が嬌声に変わっていく。グッと持ち上げるようにして対面座位に体位を変えると、アリスは悔しそうに睨みつけた後で自分から動き始めた。腰を上げ、恐る恐るまた腰を下ろす。入り込んでくる楔の形がありありとわかる。
「あっ……はぁっ……あっ……あっ……」
火村は細い腰を抱き寄せた。いつもならこの体勢だと少し上にアリスの顔があるけれど、今日は目の前にアリスの顔がある。目の前で上下する唇に何度もキスを落とす。
「んっ……あっ・・火村ッ……・火村ッ……・」
何度も高みを味わいながらも動こうとしない火村にアリスが懇願する。
「あっ……もうっ……イかせてっ……」
再びアリスを仰向けに寝かせると、足首を持って肩に担ぎ上げ、アリスの身体を折り曲げるようにして腰を打ちつける。容赦の無い攻め立てに、アリスが声を上げる。
「やぁぁぁっ……・」
甲高い嬌声とともに、アリスが一際激しく痙攣して、火村を締め付けた。
「うっつぅ……」
ゆっくりと弛緩したアリスをがくがくとゆすって火村はアリスの中に熱を放った。
かろうじて屋根があるとはいえ、開け放された縁側という一歩踏み出せば屋外という場所で淫猥な行為にふけってしまった。(それも結構長い時間だ)
中身のアリスは何度も経験しているけれど入れ物のアリスは初めての行為だったわけで、かなり身体に負担がかかったようで、コトが終わった後アリスは気を失うようにして眠ってしまった。
「こんな場所でこんな子供に……何やってんだよ、俺は」
火村はアリスの身体を拭いてやってから抱きかかえて車に戻った。周囲に気を配って、誰もいないのを確認してから、門のすぐ外においてあった車にアリスを乗せる。こんなところで気を失った子供を車に乗せているところを誰かに見られたら間違いなく通報されてしまう。まして、アリスの身体のあちこちには情交の跡が生々しく残っているのだから。
シートを倒してアリスを寝かせてやって、ジャケットをかけてやる。月明かりでははっきりわからないけれどどうもアリスの顔色が悪い。おとなしくしているアリスに調子に乗って無理をさせすぎた。
マンションの駐車場で空き家の門の鍵を開けたままにしてきてしまったことに気がついた。
「ま、いいか。あんな南京錠その気になりゃすぐ開けられるし、あっても無くても同じようなもんだな」
実際火村もすぐに南京錠を開けてしまった。コツさえ知っていればすぐに開けられてしまうものなのだ。
助手席に回ってアリスの様子をみると、アリスは丸まってよく眠っている。そっと手を伸ばして額に手を当ててみる。幸い熱は出ていないようだ。起こさないように気をつけながら抱き上げてエレベータに乗る。
標準よりは小さいとはいえ、中学生の男の子を抱き上げていくのはなかなかに体力がいる。ずりずりと落ちてくるのをゆすりあげて抱えなおすとアリスが目を覚ました。
「……・ん?」
「悪い、起こした……大丈夫か?」
「ん、大丈夫。歩けるから降ろして?」
もぞもぞとするアリスをそろそろと降ろす。少しふらついているけれどエレベータの壁に寄りかかれればどうにか立っていられるようだ。うつむいてぼんやりしているアリスをそっと抱き寄せると少し恥ずかしそうにアリスが身を寄せてきた。
「桜、碌に見れへんかったなあ」
「そうか?俺は結構見たぜ?」
「そうなんか?ええなあ~」
そういって見上げた火村の顔がニヤニヤと笑っているのをみて、アリスがちょっと首をかしげ、それから嫌そうに唇をゆがめる。
「なんや、いやぁな笑い方やなぁ……なんやねん」
「いや、お前もしばらくは見られると思うよ?桜の花」
「??」
「風呂場で鏡を見れば」
初めはわからなかったようだけれど、不審げだったアリスの顔が徐々に赤くなっていく。
「なにをっ……何を言うてんねんっ!このアホッ!」
火村はアリスの耳元に顔を近づけて囁いた。
「なんで?綺麗だぜ?」
「なっ……なっ……」
ゆっくりとエレベータが止まる。
火村はグイっとアリスを抱き寄せると怒りでわなわなと震えているアリスの唇に自分の唇を押し付けた。
「……んっ……」
扉が開くのと同時に、アリスは火村を押しのけるとよろよろとよろけながらエレベータから飛び出した。
「おい、まだ走ると危ないぞ」
深夜とはいえいつ扉が開くかわからないタイミングであんなことをするなんてっ。しかもここは火村もしょっちゅう入り浸っているアリスのマンションなのに。
「誰も見ちゃいないって。それに今のお前見たってすぐにはアリスだって思わないさ」
よろけるアリスにすぐに手を伸ばせるくらいの距離をとりながら後ろをついてきた火村がのんびりとそう言う。
確かに今の姿ならアリスは大丈夫かもしれないけれど、真野さんや管理人さんは火村の顔を知っているのだから、深夜のエレベータで未成年にキスをしていたところを見られたら困るのは火村のほうなのにっ。
「そんなへまやらかすかよ」
火村が笑った。かなりご機嫌なようだ。
ぷりぷりしながら部屋に入ってリビングにたどり着くなりアリスはソファに倒れこんでしまった。
「ダルイ~……」
「風呂は?入りたいだろう?」
「ん~……」
「入れてやろうか?」
火村の言い方が茶化すような言い方ではなく、真面目な口調だったのでアリスは少し考えてから聞いてみた。
「…………へんなこと、せえへん?」
「信用ねえなあ。しないよ。今日はこれ以上したらお前壊れちまうよ」
苦笑いしながらそういった火村に、にっこりと笑ってアリスが火村に手を伸ばした。
「誕生日はもう過ぎたし。今度は火村が俺にサービスするんやな」
「大サービスだ」
火村は笑いながらアリスを抱き上げて、バスルームに連れて行った。
火村は約束どおりに「ヘンナコト」はしないで、壊れ物を扱うようにアリスを風呂に入れた。
アリスはベッドまで運ぶという火村から逃げるようにして寝室まで歩いていった。
確かにいつもよりはずっと大変だったけれど、もう数え切れなくらい身体を重ねてきた火村の抱き方は良く知っているから初めてのときほど酷い状態じゃない。そういえば初めて火村としたときも、終わった後に火村は大事に大事に風呂に入れてくれたなあ、と思い出してアリスはクスッと笑った。
火村の腕に抱きかかえられるようにしてベッドで2人で横になる。押し寄せる眠気にたゆたいながらアリスは不安に思っていたことをそっと口にした。
「なぁ、火村。……もし、俺が元に戻れへんかったら、どうするん?」
「ん~……そうだなあ……とにかく一度はアリスの両親に会いに行かなくちゃなあ」
「?あ~、うん、まあそうやけど。そうやなくて……その、俺とのこと……」
「だからさ、お前を俺が引き取るってコトをきちんと言いに行かなきゃいけないだろう?」
「…………うん」
まだ湿ったままの髪に指を絡めてグッと頭を抱き寄せた。火村の胸が湿ってくる。それが濡れた髪のせいではないことはわかったけれど、火村は黙ってアリスの頭を抱きしめ続けた。
翌朝、火村が目を覚ますと、腕の中に納まっていたはずのアリスが収まりきらないサイズになっていた。
「…………戻ってる」
昨日の夜、眠りにつく前にアリスに言った言葉は本気だった。
もし、アリスが元に戻れなければ、火村はアリスを自分の手元に引き取るつもりだったのだ。いくら中身は大人でも外見があれでは一人暮らしはできないし、対外的には学校にも行かなくてはいけないだろう。両親とともに再び生活するのが普通かもしれないけれど、そうなればもう今までのようにアリスと2人だけの時間を持つのは難しくなってくるだろう。ならばちゃんとご両親に説明して自分のところに引き取ろう。ばあちゃんもびっくりするだろうけれど、きっと歓迎してくれるはずだ。
そう告げた火村の腕の中でアリスは声も無く泣いていた。明るく振舞っていても不安だらけだったはずだ。
それだけで、腕の中の存在を絶対に守りぬかなければいけないと、そう思っていたのだ。
すうすうと寝息を立てているアリスの前髪をそっと掻きあげる。現れたのは見慣れた同い年のアリスの顔だ。丸くなって眠っている姿は変わらないけれど。
ほっとすると同時になんだか少しもったいなかったような気もする。もう2,3日、一緒にいられたら良かったのに、なんて。
昨日はやりすぎたと思ったりしたけど、子供のアリスとするチャンスなんてもう無いかもしれないのだから(あっても困るし)もうちょっとじっくり味わっても良かったかも。
あらわになった額にそっと唇を押し付けた。柔らかい猫ッ毛は幼いころのまま。目を覚ませば昨日見たアリスを思い出させる大きな目でくるくると表情を変えるのだろう。
アリスが祝ってくれる以外には意味なんて大して感じられない誕生日だけれど、今年の誕生日は本当に印象的だった。別に稚児趣味があるわけじゃないけど、写真でちらりと見ただけの、火村が知らないアリスに会ってみたかったとずっと思っていたのだ。あんなにかわいらしいアリスに出会えたのは最高のプレゼントだ。
まあそんな風に思えるのも元に戻れたアリスを目にしているからだけれど。
「む……むう……・」
もぞもぞとアリスが身じろぎした。長めの髪に寝癖がついている。昨日、シャワーを浴びたあとにちゃんと乾かさないで寝たからだ。
「おはよう」
「…………おはよう…………」
返ってきた声も、少しかすれているけれど聞きなじんだ声。自然と頬が緩む。
「良かったな、戻ってるぜ?」
「……?」
ショボショボと目をさせながらぼけっとしたままのアリスに火村はクスッと笑うと、ほら、と布団を捲り上げた。寝る前はぶかぶかだったはずのTシャツとトランクスが、ちゃんと身体にあったサイズになっている。
「……・あ」
ペタペタと顔や手足を触ってから「うひゃあ」とか何とか小さく叫んで火村に抱きついた。
「戻ってる!……・ん?……・・??」
ぎゅうっと抱きついた感覚に、アリスが首をかしげた。なんだか……ちょっと……・
「火……火村?……君……・」
「なんだ?」
恐る恐る身体を離して、火村を見つめた。
「…………」
「なんだよ?」
初めは、自分が大人に戻ったからそう感じたのかな?とも思ったけれど。
やっぱり気のせいなんかじゃない。
「火村……君……・・それ、何歳くらいや?」
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